4月2日を「図書館記念日」とする説について
- 明治5年4月2日(陰暦)に、書籍館が開設されたから?
- 明治6年1月1日に太陽暦に改元されるまでの表記は太陰暦を用いるという日本近代史の慣例に沿って、以下断りがない場合、明治5年以前は旧暦を用いる。
- 実際、そのように記述している文献やウェブサイトもあるようである。
検証
近刊の文献
- 『近代日本公共図書館史年表』を引いてみると、書籍館設置は『国立国会図書館三十年史』を典拠にして4月28日(太陽暦では1872年6月3日)となっている。
- この典拠は本文ではなく、資料編巻末の年表によるもののようである。国立国会図書館HPの沿革でもそのように記載されている。開館は8月1日であったとされる。
『帝国図書館一覧』
- 明治34年の『帝国図書館一覧』の略沿革を見ると以下のようにある。「本館ハ初メ東京書籍館ト称ス明治五年四月文部省ノ創設ニ係リ旧大学講堂ヲ以テ仮館トナシ旧大学ノ書籍及ビ旧大学南校ノ洋書ヲ陳列シテ始テ公衆ノ閲覧ニ供シタリ(1頁)」
『文部省第一年報』
- 明治6年の『文部省第一年報』はもう少し細かく。「本館ハ明治五年四月博物局ニ於テ創立スル所ナリ当時大学講堂ヲ以テ仮館トシ文部大丞町田久成ヲシテ館務ヲ兼理セシム五月大学ノ書籍且旧南校所蔵ノ洋書モ亦博物局ニ館セシメ六月文化進歩ノ為メ此館ヲ置キ…八月一日始メテ館ヲ開ク」とある。
- 細かいが、これを読むと設置が四月なのか六月なのか混乱してくる。
官制では?
- 官制上いつ設置されたのかを日本法令索引の明治前期編で引いてみると、博物局からの上申に対して、「文部省仮書籍館ヲ設ケ書籍縦覧ヲ許ス」という許可が下りたのは明治5年5月17日付であったということがわかる(典拠は『太政類典』2編45巻)
- 情報量が多い『上野図書館八十年略史』でも、このあたりの記述は日付を欠き、月までしかわからない。ただ、博物局の上申を本省が許可したのは5月13日と書かれていて、『太政類典』との記述に食い違いがある。
- 日付はハッキリしないが、これを受けて文部省番外として6月に布達されたのが、「東京湯島博物館中ニ書籍館ヲ設ケ書籍借覧規則ヲ定ム」であった。
現在は4月30日が図書館記念日
- 日本図書館協会の見解では別の見解。こちらのほうが有力か。
- 松本喜一帝国図書館長が昭和天皇に御進講を務めた際、始めて図書館のことが話題にされたのが4月2日ということで、4月2日を図書館記念日としている説がある。
- 現在は4月30日。図書館法公布の日を「図書館記念日」としている。